科教協理科授業入門講座
Q.どんな目的でするの?
A.授業で困っている人を元気にします。
 授業をどのようにつくっていったらよいか,またその背景にある考えはどんなものか,それを具体的にお話ししたいと思います。
 科教協関係の文献をたくさん読んでいる方,サークルに通っておられる方,経験の豊富な方,そんな方には当たり前だと言われてしまいそうなこともたくさんお話しします。なぜなら,今回は,理科の授業に困っておられる方のための講座だからです。
 科教協のいろいろな文献を読んでも,「なんか,敷居が高いなあ。」と思う方は身近におられませんか。
「科教協は理科の専門の人だけが集まるところでしょ。」などと言う方はおられませんか。
 ぜひそんなな先生方に教えてあげて欲しいと思います。科教協は,すべての国民のため,すべての教師のためになる研究団体です。

Q.どんなことをするの?
A.模擬授業です。自分がやっている授業とほぼ同じようにやります。
 授業とはどうあるべきかと,いろいろ話をされてもあまりピンとこないことも多いでしょう。「じゃ,今目の前の子どもたちにどうすればよいの。」という疑問が出ると思います。この講座は,そうした要望に応えて,具体的な話を中心にします。
 模擬授業で,「このように私は運営しますよ。」という実際の姿で語ります。
 体験すれば,「ああ,ここのところはこうすれば良いんだな。」と,具体的に分かります。
 発問の仕方,ノートの取らせ方,発言のさせ方etc.子どもたちに指導することは,たくさんあります。それらを具体的に体験してもらいます。
   科教協全国大会ナイターなどで,今後も行っていく予定です。

Q.地方では何ややっていますか?
 サークルや支部で,次のような会が行われています。
 教科書を使って授業することの多い先生方に,実験のコツを実際にやってみてお知らせします。

2006年6月11日 千葉 入門講座 
 会場を埋めたたくさんの参加者のみなさんに,講師陣が熱く語りかけました。
ものづくりに取り組む参加者のみなさん メイン講師の三上周治さん
会場いっぱいの参加者のみなさん
低学年分科会 佐久間徹さん 3年 小幡勝さん
4年 野村治さん 5年 丸山哲也さん
6年 佐藤完二さん 中学 杉山栄一さん
受付 松戸理科サークルのみなさん お疲れ様でした  実行委員長


 

模擬授業のビデオ(2時間) 1300円(送料込み)VHS,DVD−Rのどちらかを指定してください。
お申し込みはこちら。 
小学校の部(松本徳重さん[溶解],玉井裕和さん[水溶液])
中学校の部(青野裕幸さん[植物],石渡正志さん[遺伝])
札幌大会のナイター(模擬授業者 左巻健男さん[中学化学分野] 宮内主斗[小学3年磁石])
 
内容紹介
松戸の入門講座 (三上周治さん)のDVDができました。 内容 植物、電気

 松本徳重さんが,授業のノート指導に関して『理科教室』に連載を始めました。2004年1月号から
ぜひお読みください。

 参加者の感想
・先生方のご努力、工夫に感動しました。勉強になりました。
・科教協の伝統に裏付けされた授業法を初めて体験させてもらえてとてもよかった。今後この授業法を学習し、自分の授業に取り入れたいと思う。
・普通の研究授業や模擬授業と違い、教えるときのポイントなどを細かくシュミレートとしていただけたので、大変勉強になりました。
・日ごろ自分でも科教協の書籍を読んで実践しているのですが、実際に模擬授業を見せていただき、内容以外でも子どもへ対応で、子どもへの理解と愛情が深いと感じました。ありがとうございました。

 ◎理科教師入門 宮内主斗@科教協ホームページ担当のサイトへ

 ◎『理科教室』2003年10月号に,第1回の様子が掲載されました。

模擬授業者 主な著書・講座の内容など
小学校の部 玉井裕和さん(大阪)
『最新小学理科の授業5年』(民衆社)他多数
 授業のビデオも公開予定。
当日は、6年の「酸のはたらき」のところをやります。

大会分科会のレポートも兼ねたものですが、
1 プラン
2 授業記録
3 近大附属小のカリキュラム
の3つの内容のレポートを用意しました。
これは、授業が終了してから配ります。

 研究授業を編集したビデオテープを、
10本ダビングして用意しました。
ご希望の方に頒布します。

 送料込み1300円 玉井さんへメール
松本徳重さん(千葉)
『最新小学理科の授業5年』(民衆社)他多数
東京大会で、新しい人に授業入門をすごーーーくしてみたくなりました。
体調も戻ってきましたので、何かお手伝いが出来ればと考えています,
よろくしお願いします。
入門講座についてです。次のようにします。5年の溶解の学習を中心にします。
そのときに、有色透明の学習を中心にして、資料を少し分けられるかもしれません。
もう一つは、ノートと授業について解説をしながら行います。
このために資料をかつて作ったものを少し直してプリントしました。
きっとこれは使えるかもしれません。
 A4 70ペ 送料込み500円
  現在,品切れ中

中学校の部 青野裕幸さん(北海道) 『新しい科学の教科書』(文一総合出版)他多数
 サークルwisdom96のサイト
http://www.edu-japan.net/~wisdom96/index.HTML
 
授業タイトル「八百屋の植物学」

 植物の学習を進めていく中で、日頃自分たちが
接することの多い植物に目を向けるというのは、
持ち続けなければならない重要なポイントである。
本時は、最も身近な植物であるはずの
「八百屋さんの植物」
に着目し、そこから植物の一般的な性質を学
び取ったり、観察眼を鋭くとぎすますチャンスにする
ことを目標とした。

 「サヤエンドウ」「キュウリ」「バナナ」「オレンジ」
「スイカ」などを題材にして、植物の花や果実の
共通性と葉から進化してきた花、
花から生長した果実の共通点
に着目して指導していきたい。
そこには非常に興味深い共通点と進化の痕跡が
残されていて、他の植物でも、その分析方法は確
実に当てはまる汎用性の高いものである。
 授業で使える教材をCD−Rにまとめました。


石渡正志さん
(千葉)
『新しい科学の教科書』(文一総合出版)
・共著『環境教育と理科教育(中学校理科教育実践講座11巻)』
  (鶴岡義彦編 ニチブン 1994)
・共著『環境教育シリーズ2 学校と環境教育』
  (大田尭編 東海大学出版会 1993.7)
・共著『中学校理科で進める環境教育』
  (山極隆編 明治図書 1993.12)
・共著『新中学理科の授業(3年)』
  (左巻健男編 民衆社 1992.6)
・共著『最新中学理科の授業(3年)』
  (左巻健男・杉山栄一編 民衆社 2002.5)
・共著『理数科教師をめざす人のための教育実習』
  (東邦大学教員養成課程編 紫峰図書 1995.5)
・共著『新しい科学の教科書K』『  〃   L』
  (左巻健男編 文一総合出版 2003.3)

 機会があれば入門講座を受講したいと思っていたら、
講師の要請が来てしまいました。微力ですが、
授業づくりの苦労話などを聞いていただければと思い
ます。よろしくお願いします。
 私の授業づくりのポイント
  1.理科は考える時間だ!
   →そのためのルールづくりが大切。
  2.発問が授業を決める!
   →発問のしかたで授業が大きく変わる。
  3.失敗は必ずメモする!
   →いい授業は一朝一夕にはできない。

授業で使えるワークシートを頒布します。
「新版・動物の世界」22時間分 2500円
(送料込み)
「細胞・発生・進化」14時間分 1500円
(送料込み)
 注文または問い合わせはメールで石渡まで。
  アドレス m-ishi@hkg.odn.ne.jp

○第2回 理科授業入門講座の様子
授業本の行間が分かる
 なぜ,模擬授業なのか。それは,いろいろな側面があるが,情報量の多さがまるで違うことを挙げておく。
 授業のレポートよりはテープ,それよりビデオの方がずっと情報量が多い。しかし,教師が「授業を成り立たせるいろいろな手はずを伝えたい。」という意図を持って,それを自分がやって見せて語るとき,それは,聞き手にとって大変大きな情報だ。
 しかも,本や大会で得られるレポートにはあまり書かれてない,授業を成り立たせ,学級集団づくりをするためのノウハウが語られるとなれば,聞き逃せない話になる。
○玉田先生,中村先生の本はとてもためになります。しかし,授業づくりに大切な技術的なこと,約束的なこと,小さなしかし本質的な注意は書かれていません。
 その行間のかくれているところが,今日のような試みに表に出てきてとてもためになりました。楽しく役立ちました。(Aさん)
 このような感想が,たくさんあった。特に,小学校の部の松本さん(千葉)の話には,生活指導面・児童実験などの約束事の指導まで含め,いろいろな話があった。
討論を組織する
 また,討論を組織するのは,教師の力量が必要である。
○今日,松本先生と玉井先生の授業を実際に受けてみて,予想をさせ,討論をさせることの大切さが分かりました。まだ3年生で予想を立てることすら難しい子ども達ですが,2学期からひとつずつ指導をして,理科のおもしろさを知り,思考をみんなで高めていけるような授業ができるようにがんばっていきたいです。(Bさん)
 このように,大事だと思うこと。だからこそ指導したいという強い願いを持つこと,これが大切だ。模擬授業では,このようなことが体験として伝わっていく。
 教師は,自分で討論の授業を体験したり,ビデオなどで見たりして,自分の授業ではどうしたいかのイメージを作る。
そういうことをしておくから,子ども達が楽しく討論できるように組織できていく。
中堅教師にも魅力
 また,この講座に参加した,中堅の教師は次のように書いてくれている。
○ていねいに基本から教えてもらい,よくわかった。やはり,基本的な指導法というのは,繰り返し聞いてもいいと思った。(自分の実践を反省する意味で)(鹿児島 Iさん)
 このように,お互いの実践が,具体的な授業のレベルで交流されれば,お互いの授業の質が高まっていくのではないかと思われる。
 この講座は,若い先生方向けに企画したが,こういった先生方にもお役に立てるのである。小学校の先生がわざと中学校の先生の模擬授業を受けに行き,生徒になった新鮮な気分で考えたという感想もあった。
知識の羅列でなくストーリーを
 中学の部では,生物単元をあえてお願いした。実験でなく覚え込み,という印象のある生物分野で,魅力ある授業づくりをどうすればよいか知ってもらうためだ。検定外教科書で生物分野を書いておられる青野さんと石渡さんにお願いした。
 二人ともワークシートを作り,その生徒用ワークシートに考えたことなどを書きながら進めていく模擬授業であった。
 ここに出てくる問題は,先生方であってもすんなりとは答えられない問題が入っている。
 大事なことは,それがただの難問クイズにはならず,いくつかの問題を組み合わせるとちゃんと授業のテーマになることだ。ここがクイズと授業の違いである。
 石渡さんの問題なら,「まったく同じヒトはいない」というテーマで貫かれている問題群が並んでいた。「授業のまとめはいらない。わざわざまとめをしなければならない授業は,その組み立てに問題がある。」と言っていた。それは,まさにその通りなのである。
 青野さんは,八百屋に売っている果実を使い,「花から実へ」,「葉から花への進化」という一貫したテーマがある。
○果実と種子が葉から進化したこと,多様性の中にある基本形を見つけることの楽しさ,すばらしさをよく味わわせていただきました。
 エンドウなど八百屋さんで見る身近な教材を使うことも,魅力的でした。 (Cさん)
 そんな授業のノウハウを具体的に学ぶことができたのが,この「理科授業入門講座」であった。
「次回の札幌大会でも,ぜひやって欲しい。」と,北海道の大野栄三さん(大会委員長)からも要望があった。もちろん,ご要望にお応えしよう。

 番外編 講座の後の懇親会も,有機化学物質の力を借りて盛り上がりました。(^^ゞ

 ○満員御礼 第1回東京大会の様子

模擬授業をする佐久間徹氏
 第1回は,科教協関東ブロック集会の1時間前から行われました。
 科教協の集会では人気の「科学お楽しみ広場」の「裏番組」という枠で行われたので,当初はお客さんがほとんど来ないのではないかと心配されました。しかし,開催寸前になって予約がどんどん入ってきました。
 実験室が会場になりましたが,机に向かって座れない人,イスさえなくて立ち見の人も出るほどの盛況でした。担当した二人が,参加した方に分ける資料が足りなくなり,参加者の皆さんにはご迷惑をおかけしました。m(__)m
 科教協に集う人は,実験だけでなく,どうすれば自分の授業を良くできるのかを常に考える人もたくさんいることがわかりました。
宮内主斗氏 植物分野の模擬授業
1.授業で困っている人を元気に
 今回は,授業をどのようにつくっていったらよいか,またその背景にある考えはどんなものか,それを具体的にお話ししたいと思います。
 科教協関係の文献をたくさん読んでいる方,サークルに通っておられる方,そして私より経験の豊富な方,そんな方には当たり前だと言われてしまいそうなこともたくさんお話しします。なぜなら,今回は,理科の授業に困っておられる方のための講座だからです。今回,「なんだ,そんなことなら実践しているぞ」という方は,ぜひ身近な先生方に教えてあげて欲しいと思います。

2.教育は予防
 まずは,「教育は予防だ」ということをお話ししておきます。子ども達がうまくいかない状態,混乱する状態,そんな状態にしないように予防措置を打ちます。これが教育の本質だと思います。予防措置→子どもができる→子どもを褒めてあげられる→子どもは喜んで身につける,という好循環があります。
 それをしないと,子どもが失敗して,それを教師が怒って,子どもはそれによってやる気をなくし,さらに失敗するようになる,という悪循環を引き起こします。
 私もそんな泥沼に陥ることが時々ありますが,「教育は予防だ」ということを理解し,授業の運営をしていくことにしましょう。
「育てることが教育であり,予防は教育ではない。」という意見もあるでしょうが,「いろいろな予防措置をしていき,子ども達を育てていく」という点では同じです。

3.課題は教師が吟味して
 まず,課題を出します。これは,教師から明確にしっかりした意図を持って出します。間違っても子どもにゆだねてはいけません。「子どもが自ら考え出した課題なら,主体的に取り組む」という話がありますが,半分当たっていて,半分は間違いです。未だ学習してもいないことについて,面白い問題を考え出せますか。先生は教科書を持っていて,教師用の指導書も持っていて,それでいて自力で面白い問題をいっぱい考え出せるかというと,できないでしょ。だから,ここに来るわけですね。
 だから,無理な要求をしてできないからと,子どもを責めちゃいけません。
教師は自分でできもしないことを,子どもに要求するもんじゃありません。
 ただし,教師の用意した面白い問題でも,その意味が子ども達のものになる,つまり子ども達の切実な問題になるようでないと,だめですね。
 問題が子ども達にしっかりと浸透していく措置をしなければなりません。

4.課題をノートに
 では,問題を出します。いいですか,先生はちゃんと聞いている人が,同じことを何度も聞かされることがないように,1度しか言いません。1度しか言わないし,黒板にも書きません。自分で聞いて,自分でノートにまとめるのですよ。これが,予防ですね。
 アブラナがここにあります。アブラナは生きてますか。生きてますよね。では問題です。
「アブラナが生きていると言うことを考えて,その体を大事な4つの部分に分けなさい。」
 書き始められる人は,話を良く聞いていた人ですよ。私は,机間巡視をするとき,たいがい褒め言葉だけをかけるようにします。大したことを言ってやしません。「速い」「丁寧」「良く聞いていた」そんなことでいいんです。 逆に,「速くしろ」「字は丁寧に」「ちゃんと話し聞いてろよ」などと言われていたら,それを続けられていたら,子どもはいやになっちゃいますね。
 さて,こうしているうちに書き終えてしまう子が現れます。そんな子には,問題を何と書いたか発表してもらいましょう。速く終わった子が何をすべきか明確にすると,授業中,がやがやすることが少なくなります。「うるさい」「だまってろ」と言う代わりに発表させて他の子の役に立たせればいいんです。発表させて,「良くできた」と言ってやって,聞いてたか聞いてないかわかんない子がクラスにはいるでしょ。そんな子に参考にしてもらうのです。 (以下略)
佐久間徹氏
平角電池を使うと,大容量なのでたっぷり実験ができます。
また,角形なので安定して立つところが,実験をやるときに大変便利。
 佐久間さんの模擬授業は,非常に歯切れの良い語り口で,聞いていると安心できました。
かつて,豆電球の口金を外すときには,アルコールランプであぶっていました。
でも,接着剤が高性能になって,それでは外れなくなりました。
でも,こうすれば簡単。
最初にやるときには,ガラスが割れそうでおっかなびっくり。
でも,実際にやってみれば,意外に簡単。
「これで,先生方,子どもに教えてあげられますね。」
と,佐久間さん。
 模擬授業は,こんなことも学べるのでいいですね。